ITS情報通信システム推進会議

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+平成19年度 ITS情報通信システムシンポジウム 開催レポート


+5.講演3〜テーマ「ドライバーにとって便利で役立つITSとは?」
 株式会社JAF MATE社 JAF Mate編集長 鳥塚 俊洋 氏

鳥塚 俊洋氏<講演概要>
■ 私はJAF、日本自動車連盟の月刊誌を編集している。今日は、普段読者の方々から編集部にいただく意見、要望や弊誌で行っているアンケートなどをもとに、一般のドライバーやユーザーの方がITSというものをどのように捉え、考えているかということを紹介し、今後の研究開発等に少しでもお役に立てればと思う。

■ よくユーザーの声という言葉が使われる。開発する側の声に対するもの、あるいはサービスを提供する人たちの意思や意見に対するものとして、ユーザーの声ということが言われることが多いが、ではユーザーの声というのは本当にあるのか。当然であるが、ユーザーの声というのはあらゆる意見を集めたものを指しているので、一つの整理されたユーザーの声とか、定型化されたユーザーの声というものはない。非常に多くの意見が集まったものがユーザーの声である。ユーザーの声というのは、一つの意見、意思として開発側・提供側の声に対する形で置かれるような、ある一定の意見ではないのである。また、そのようなユーザーの声の大きな特徴は、非常に個人的であり、主観的であり、利己的であり、ある意味わがままな声である。ユーザーの声は、開発・提供する側、あるいは技術的な問題、社会的なルールの問題、状況などはあまり考慮されていない。わがままな事、自分がほしいものやりたいものを、そのままサービスに対して求めるというのがユーザーの声なのである。だから、製品開発などにはユーザーの声を参考にしないといけないといわれるが、これはなかなか簡単な事ではない。とはいえ、その中に使う側の本心が入っているというのも事実である。そこをいかにうまく抽出して探り出すか、というところがITSに限らず世間に認められるサービスをつくっていくうえでは、とても大切ではないかと思う。いわば宝の原石のようなものがユーザーの声ではないか、と読者の声等を聞いていると感じる。

■ そういったユーザーの声をもとにユーザーにとって役立つITSとは何か、ということを考えてみると、専門家の効率や論理だけで開発されたものでなく、幅広いユーザーのわがままを飲み込んでくれるものということになるだろうか。

■ ASVは、安心安全のITSの中心的なテーマの一つではないかと思うが、ASVについてもまだ知られていない部分がある。ユーザーに知られていないという事は、興味が無いという事であり、興味がなければユーザー側からのリクエストも上がってこない、そうすると提供する側の考え方で開発したものになりがちである。この繰り返しで悪循環に入っていく、ということが考えられる。今のITSの状況を考えると、VICS、ETC等普及が進んでいるものもあるが、この悪循環に入ってしまう可能性のあるサービスもあると思われる。この悪循環をどう抜け出すかだが、一つはプロモーションではないか。JAF MATE社としても積極的に協力しなければならないところだが、メディア等を通じ、ユーザーにわかるような形でわかりやすく訴えていく事が大切であると考える。状況が変わって好循環の輪に入ることができれば、そこで一気に普及することもある。ETCに関しても、やはりメディアに広告、記事等が出て話題になったときから一気に普及が進んだ。ユーザーから見た場合には、メディアを通して情報が出るというのは、非常に大切な事であると考えられる。

■ ETC装着率について一昨年とったアンケートによると、車載器の装着率が全国平均で約20%、地域的には、首都圏、関西圏、愛知県で、都市高速があり、普段利用できる人が多い地域で装着が進んでいる。ETCを着けない方になぜ着けないのかと聞くと、利用頻度が少ない、必要ないというのを除くと、上位にくるのが価格費用。やはりユーザーは価格を非常に重視しているという傾向がよく出ている。平成17年頃、今ではメジャーになっている深夜割引、通勤割引、マイレージ割引等が始まっている。この割引とあわせるように、利用率が非常に伸びている。割引というものがかかせないということがよくわかる。

■ ASVについてはユーザーの期待度は高いものがある。すでに商品化されているものもあるが、運転した事があるか、または興味があるか、という質問をすると、ほとんどの方が興味はあるが運転した事がない、と答える。せっかく開発されて出来たものなのに、ユーザーにそのよさがうまく伝わっていないという現実がある。たとえば、見えない部分を車々間通信、路車間通信を通して見えるようにしてあげるというのは、ASVの重要なテーマだと思うが、ユーザーから見た場合に、コーナーミラーとどこが違うのかとまず聞かれるだろう。コーナーミラーというのは誰でも使えて分かりやすく、信頼度が高い。そういうユーザー側から見たときの安心感、簡単さ、やさしさ、分かりやすさをこれからの路車間通信、車々間通信によるものにも与えて、そのことをしっかりとユーザーに説明しないと、いくら高性能になってもコーナーミラーを超えた普及というのは難しい部分があるのではないか。

■ ユーザーにとって重要なのは、どの技術で何をするかではなくて、何をサービスするのかという事で、例えば携帯電話やPCで出来る事をそのまま車内にもってきて出来るようにしても、おそらく誰も振り向かない。例えば高速道路で渋滞にあったら、近くのレストランで渋滞しているときだけ割引サービスがある、さらに高速道路上でなくても、スマートインターチェンジから外へ出て、またスマートインターチェンジから戻ってくれば連続して乗った事にしてくれる、そういう形で渋滞時の交通量を落とす事ができれば渋滞緩和の対策にもなる。あるいはSAの中に無線スポットを使って渋滞時には映画鑑賞が安くできる、これも全てETC等を使って安く見られる、そういう色々な複合した形を、ITS車載器を使って実現できるようになれば、ユーザーにとって面白いものになるのではないか。今のETC車載器のバージョンアップというかたちだけではユーザーも振り向くのは難しいと思われる。

■ 今、車の業界では、若者が車に興味を持たなくなっている、というのが大きな問題になっている。車は使うが車に興味を持っていない。以前は車が好きだから、趣味だから、という部分がかなりあったが、現在は非常に減っている。おそらくIT、パソコンやネットワークや携帯にユーザーをとられたという見方がある。そんな車の魅力を戻すための大きな鍵として、ITSは重要な役割を担えるのではないかと思っている。最新技術の応用が先にあるのではなく、ユーザーメリットの実現から開発・実用化されたITSが、おそらく今ユーザーが求めている内容であろうと考える。

■ 車のある生活は楽しいかと聞くと、90%以上の方が楽しいと答えている。車というものは生活に欠かせないものであり、それをITSでもっと魅力のあるものにしていくことは非常に楽しみな事であり、重要な事だと思うので、今後も技術開発と研究等を進めていただきたい。

>> 鳥塚俊洋氏の講演資料はこちら(PDF:297KB)


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