ITS情報通信システム推進会議

私たちは情報通信技術を活用し、世界で最も安全で環境にやさしく経済的な道路交通社会の実現に寄与します。

シンポジウム

+シンポジウム

+平成17年度 ITS情報通信システムシンポジウム 開催レポート


+3.講演〜テーマ「経済の視点から見たITS」
 一橋大学大学院商学研究科研究科長兼商学部学部長  山内 弘隆氏

山内弘隆氏 <講演概要>
本日の講演では、経済学の視点から、ITSの技術について述べてみたい。

■経済学における技術革新については、村上泰亮が「技術革新とそれに基づく規模の経済」、「相対的規模の経済による豊かさの実現」、「経済上の豊かさを導き出すインセンティブ」という諸点から述べている。また、J.スティグリッツが「マーケットのダイナミズム」、「見かけ上の平等がもたらす非効率」、「動態的経済学の必要性」という諸点から述べている。さらに、J.シュンペーターは、技術に関して、その革新(イノベーション)こそが利益の源泉、経済発展の源泉だと述べている。シュンペーターがいうイノベーションとは、従来の技術の延長ではなく、新しい製品、新しい市場等によって成り立つ「新結合」のことである。

■ITS(Intelligent Transport Systems)の技術は、市場の成長性、市場規模からみて、将来の有望技術だと考えられる。ITS産業に対しては、市場の失敗という視点から、社会的便益を拡大するために政府による保護・介入が是認される。大規模施設やインフラストラクチャーのような規模の経済が存在する場合、経済学的な観点からは、施設部分を公的に負担して、価格を限界費用に設定する政策が是認される。また、外部効果が存在する場合には、価格シグナルを是正するために、公的介入が是認される。ITS技術は、正の消費の外部効果が存在すると考えられる。さらに、ITSの技術を普及・定着・発展させるためには、政府、自治体、事業者等によるコラボレーションが必要である。ITSの普及を阻害する要因としては、次の4つがある。(1)技術開発先行・ニーズ軽視の供給者側の姿勢、(2)使い方や効果等に関する十分な情報提供の欠如、(3)ITSの多様なニーズの認識の欠如、(4)コスト負担についてのあいまいな原則、である。

■ITSの普及定着のためには、これらの阻害要因に対応することが必要である。すなわち、要因(1)について、官民はITSの供給者として、「知的交通サービス」としてのITSを供給する視点を持つ。(2)については、ITSは官民ともに供給者となるシステムであり、コラボレーションが必要であるとの認識を持つ。(3)については、政府・自治体は、ITSをインターモーダル輸送の最適化に活用し、また、ETCをTDM(交通需要管理)実施などに活用する。(4)については、政府・自治体は、安全にかかわるITSサービスのコストを負担することである。

■ITSの更なる発展のためには、各主体において、次のような取組が必要である。(1)官民のITS供給者にあっては、DSRC(狭域通信)の民生用応用システムを積極的に開発したり、マイカー利用者の環境意識向上策としてITSを活用したりする。(2)政府にあっては、「ITS交通システム」のための法律的な環境整備やETCのさまざまな工夫による魅力向上と民営化後の高速道路会社の経営へ貢献する。(3)地方自治体にあっては、地域活性化の観点からITSを活用する。例えば、地域ごとのきめ細かな情報を提供するなど。(4)ITS関連産業にあっては、アクティビティ情報と交通情報との融合による情報提供をすることなどである。

■今日の話は、ITSの専門分野外の立場で感じていることでもあり、その点で、皆様のお役に立ち、また、参考にしていただければ幸いであると考える。

>>山内弘隆氏の講演資料はこちら(PDF:68KB)

「平成17年度 ITS情報通信システムシンポジウム 開催レポート」トップページへ戻る