<講演概要>
■クルマ社会に於ける女性とは、「便利は好きだけれど、面倒はイヤ」という傾向がある。一台のクルマの乗車率は1.4人と、女性ドライバーが増えるとともに下がっている。これは女性がひとりで運転し通勤や買い物の足として使っていることを物語る。その時に求められる「自由に動きたい」「重い荷物を持って歩きたくない」という願いはほぼ達成されている。また、行動範囲も限られているので、すでにクルマに対する満足は臨界点に達し、プラスアルファを求める必要性が感じられない。女性とは自由でワガママで勉強不熱心なくせに嗅覚だけはある生き物であるということを、まず認識していただきたい。
■特にこの5年間におけるITSの進化はすばらしい。ITSの目的である(1)事故の減少(2)渋滞の緩和(3)環境の向上(4)経済効果は着実に達成され、我々が気が付かないあいだに生活の中に入り込み生活の質が向上していることはありがたいことだと思う。日本の技術力は本当に世界に誇れるものであり、活かされてこそ技術である。人が本当に必要としているものは何かを意識し見極めて開発し運用していっていただきたい。
■女性のクルマ生活とも密着しているITSの中で、道路交通情報を提供するカーナビ&VICSは、例えばETCと連動してブース誘導してくれるようになると嬉しいし、緊急通報システムも心強い。知覚障害者など障害を持つ人への情報提供も大切である。空間を楽しみ友人や家族と時間を共有するツールとしてのカーマルチメディアは、一番ニーズがあり、期待がかかる分野だが、同時に携帯電話やパソコンと食い合う部分もありかなり難しい。例えば、レストラン/ホテル情報は車内で探すほどのことなのだろうかと思う。
ETCはいまだに(1)セッティング料が車両買い換えのたびにかかる(2)クレジットカードをもてない人は使えない、という足かせがあり、頻繁に高速道路を利用する人以外は、導入意欲がわかない。高速道路を午前0時から4時の間に200km以上利用する場合の割引制度も導入された。夜間トラックを高速道路に呼び込み幹線道路の環境向上には有効かもしれないが、一般の人が知るETC=料金所渋滞の緩和、という目的からいったらナンセンスな割引制度にしか映らない。料金所通過回数で割り引くなど、ETCの特徴を活かした多彩で普及を促進するような割引制度を作るべきである。携帯電話やパソコンは、品質の向上、低価格化、開発進化速度の低下により安心感が増し、女性にも受け入れられて普及率を高めている。ETCも普及させるためには小型化・低価格化、セッティング料金の廃止、利用者の利用形態に応じた割引制度など、サービス向上が必要である。
携帯電話は全国どこでも話し相手がいれば使えるし、パソコンは逆に地方へ行くほど情報収集や通販などの利用価値が高まる。ETCが携帯電話・パソコンと確実に違うところは、生活エリアによって平等に使えないことである。ETCは高速道路があっても利用しない人には、なんの価値もない。ゆえに(1)ドライブスルーやガソリンスタンド(2)駐車場の料金所(3)マンション、オフィスビル、戸建て車庫のゲートオープンなど、早い時期での他への展開が求められる。特に女性は(2)(3)など苦手でおっくう、といった意識を持つので、女性へのアプローチとしては有効と思われる。
■ITSの今後の展開としては、便利は好きだけど面倒はイヤ、というのなら、面倒を取り除いてあげればいい。手続きの簡素化、料金の低価格化、PRの仕方など、ハード面での進化はもちろんだが、ソフト面でのアプローチにもっと工夫が必要である。
>> 岩貞るみこ氏の講演配布資料はこちら(PDF/109KB)