ITS情報通信システム推進会議

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活動内容

+シンポジウム

+平成16年度 ITS情報通信システムシンポジウム 開催レポート
+3.講演〜テーマ「ユビキタスコンピューティングとITSの未来」
 東京大学大学院情報学環教授 坂村 健氏

坂村健氏<講演概要> 
本日は、ITSの関係も深い、今や当たり前になっているTRONの事からお話したい。TRONを始めて20周年になるが、84年当時はマイクロプロセッサが未だ社会に広がるかどうかの状況であった。TRONは、“どこでもコンピュータ”と言って、今でこそ“パーベイシブコンピューティング”や“ユビキタスコンピューティング”として浸透して来たが、当時からコンテクスト・アウェアネス(実世界の状況認識)の概念を持ち、オープンアーキテクチャで進めてきたもので、今では組込み用途のマイクロプロセッサの殆どに使われるようになって来た。

コンテクスト・アウェアネス=状況認識の一つは“モノの認識”である。微小のRFIDチップを付けて“モノの認識”をする事ができる。例えば、在庫管理などはデータ更新をしなければ意味がなく、今までは“バーチャル”なものであって“棚卸”という作業が必要であったが、これを応用すれば“リアル”に状況認識する事が出来るようになる。この分野で米国の事情はどうなっているかとの質問をよく受けるが、ユビキタスはローカリティが重要であると考えている。例えば、ユビキタスコミュニケータの電波帯域は各国で事情が違い、日本でどうするかを考えないといけない。米国では流通分野でのコストダウンが課題になっているが、その要因も(シュリンケージ被害が多い)、対策原資の考え方(被害額相当が原資)も、対策方式(UHF帯利用)も米国特有であり、そのまま日本では使えない。“モノの認識”のために必要になるのが個体識別番号、即ちucode である。個々の“モノ”にucodeを付与し、それをオープンにし、誰でも利用出来るようにする。そのようなユビキタスコンピューティングを実現するための枠組みがユビキタスIDセンターであり、基盤作り、番号付与、標準化(ユビキタスコミュニケータ)等を行うオープンプラットフォームな枠組みである。

今、ITSがぶつかっている壁は、カーナビ、VICSやETCなど個々は巧くいっているがトータルな展開が見えにくいという事だと思う。サービスを広げようとすると個々にユーザ負担になり、メインの応用以外普及しにくい。インターネットのように、誰にでも開放される方向が必要である。ユビキタスITSは、ユビキタスコンピューティングの一つの応用である。例えば、GPSは建物の中では使えない。位置から場所情報を得るよう、タグを埋めて場所を区別し、空間をホームページのようにし、クリックしてその場所の情報を得るようにする事ができる。メディアはあらゆるものが可能であり、RFIDだけでなく、赤外線マーカーや電波マーカーなどさまざまな要素技術で「ucode“場所”情報システム」によるユニバーサルサービスを実現する事が出来るようになる。このようなユビキタスITSはオープンシステムである事が重要である。この事例として、国土交通省の「自律的移動支援プロジェクト」が立ち上がった。移動支援を目的としたもので、身障者支援だけでなく、すべての移動者のインフラとする事を狙っており、誘導ブロックにチップを埋め込んで状況認識する事から始めている。今後、工事情報、自販機、レストラン、ポスト等にも拡張し、街中から情報を得る仕組みづくりを進め、来年、神戸で実証実験を予定している。

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