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ITS国際セミナー開催レポート 去る3月28日(木)に当ITS情報通信システム推進会議の主催により、中国・韓国・アメリカからの講師とAPT(Asia Pacific Telecommunity)研修生を迎えて「ITS国際セミナー」を開催しました。長時間に渡り、ITSの普及と国際標準化活動に関する大変示唆に富んだ講演とパネルディスカッションがありましたので、その模様をレポートします。 【セミナー概要】 開催日時:平成14年3月28日(木)13:20〜18:00 会場 :霞ヶ関プラザホール 主催 :ITS情報通信システム推進会議 協力 :日本ITU協会(APT研修事務局) 参加者数: 聴衆 約150名 講師・パネリスト 6名 APT研修生(6カ国) 8名 日本ITU協会 6名(含 品川理事長) 【内容】 まずセミナー開会にあたり、ITS情報通信システム推進会議運営委員長代理の今井 秀樹東京大学教授から、アジア太平洋州関係各国のITS関係者と意見交換を行えることは日本のITS普及を考える上でも非常に有意義であるとの挨拶がありました。 セミナーは、 ・ 中国ITSセンター・Xiaojing Wangセンター長、 ・ 韓国ITS コリア・Yong-Taeck Lee標準化部門長、 ・ 米国ITSアメリカ・Paul Najarianテレマティクス担当部長、 ・ 総務省総合基盤局電波部移動通信課・雨宮 明マルチメディア推進室長 以上、4名の講師の方からの講演と、それに引き続き、ITS情報通信システム推進会議研究開発部会長・川嶋 弘尚慶応義塾大学教授をコーディネータに、「ITSの普及方策」、「国際標準化」といったテーマでのパネルディスカッションが行われました。 各講師による講演、パネルディスカッションの概要は以下のとおりです。 1. 日本におけるITS情報通信への取り組み (総務省・雨宮 明氏) 日本におけるITS情報通信への取り組みと題して、日本におけるITSの現状とDSRCの普及方策について語った。 日本におけるITSの現状として、当初の見込みほど普及してないことを受け、今後、インフラと車載端末の整備の重要性を指摘。 また、2004年に予定されている愛知県でのITS世界大会に向け、ITSをビジョンからリアルビジネスとするための取り組みとして、福岡市、新潟県、豊田市、高知県で進めている「地域ITSモデルシステム」実証実験を紹介。 DSRCの普及方策として、DSRCとETCとの関係、今後のモバイルマルチメディアサービスの中での位置付けを概説し、共用車載機の投入により公的インフラと民間アプリケーションビジネスの相乗効果を図ることが有効であると指摘。国際標準化に向けた取り組みについてはITU-R、ISO/TC204活動の成果、ならびにアジア地域におけるAPTの活動を高く評価。 *講演資料:ITS in Japan(PDFファイル) 2. 中国におけるITSの現状と将来像(中国ITSセンター・Xiaojing Wang氏) 中国におけるITSの現状と将来像と題して、中国における道路交通事情全般、これまでのITSに対する取り組み,及び今後の開発計画について語った。 まず、中国における道路交通事情として、経済発展による自動車保有台数の急激な伸びにより、都市部での交通渋滞や環境問題、さらには交通事故が大きな問題となっていることを説明。 そういった問題と、急速に進展している情報通信分野のインフラ整備を背景として、ITSプロジェクトとして進めている以下のような取り組みを紹介。 ・ 国家ITSアーキテクチャの研究、 ・ ITS標準化プロジェクトの設置、 ・ 都市交通マネジメント(北京等100以上の都市)の導入、 ・ 公共交通マネジメント(ICカードバス等)の導入 ・ 通信省によるETCテストの実施、 ・ ITSラボラトリーの建設、 等々 今後の予定として、国家ITS開発計画として、総合交通情報システム、都市交通管理システム等の開発及びITSのテストデモンストレーションを10都市にて実施することについて語った。また、標準化についても、国内外での積極的な取り組みを行っていくことについて語った。 *講演資料:Current Status and Future Vision of ITS in China(PDFファイル) 3. 韓国におけるITSの動向と標準化活動(ITS Korea・Yong-Taeck Lee氏) 韓国におけるITSの動向と標準化活動と題して、現状及び今後のITSへの取り組み並びにいTSの標準化について語った。韓国における、道路交通関連での問題点として、 ・ 交通渋滞、環境汚染、交通事故による経済的損失 ・ 道路網の整備が遅れによる、交通渋滞の増加 等々があり、これまでの量を重視した交通政策に対し、効率重視が求められている点を指摘。今後は、インフラの開発改良とITSシステム導入による道路交通運営の効率化を同時並行的に実施して上記問題の解決を図る方針。ITSサービスアプリケーション実現に向けては、ビーコンからDSRCまで各種インフラを利用した検討を進めてきたこと、特にDSRCについて、パッシブ/アクティブの両方式の評価を行ってきたこと等を紹介。 また、ITSの標準化に関しては、 ・ TC204に沿った国内規格の整備、 ・ 官民の協調による新たな標準化システムの策定、 ・ 交通体系効率化法に基づいた技術規則の導入 等の活動を行ってきており、今後もアジア太平洋諸国が連携し、ISO/TC‐204を 推進していきたいと語った。 *講演資料:Latest trends of ITS and Standardization activities in Korea(PDFファイル) 4. 北米及びITUにおけるITS活動(ITSアメリカ・Paul Najarian氏) 北米及びITUにおけるITS活動と題して、ITSに関する取り組み及び標準化活動内容について語った。 米国においては、9月11日の同時多発テロ事件以降、母国安全保障においてITSが重要な役割を果たすようになってきた点を指摘。 トピックスとして、旅行者向けに(1)旅行者情報(2)交通情報(3)天気情報(4)ロードサイド情報等の各種情報提供を行う「511」サービスの導入が各州で導入され、米国で最も顕在化したITSアプリケーションとなりつつある事実を紹介。 また、米国におけるDSRCの動向としては、規模の経済を優先し、当面の技術標準としてT75でなく、IEEE802.11a/RAが採択されている(ただし次世代はT75)こと、公共安全と個人利用に分け各種アプリケーションを検討していることなどを説明。 ITSの標準化に関して、ISO/TC204とITU−Rの違いを認識した上で、相互に補完しながら標準化を進めていくべきと語った。 *講演資料:ITS-Telecom Related Activities(PDFファイル) 5.パネルディスカッション ITS情報通信システム推進会議研究開発部会長・川嶋 弘尚慶応義塾大学教授をコーディネータに、今回講演していただいた、 ・ 中国ITSセンター・Xiaojing Wangセンター長、 ・韓国ITS コリア・Yong-Taeck Lee標準化部門長、 ・米国ITSアメリカ・Paul Najarianテレマティクス担当部長 以上3名の講師にITS情報通信システム推進会議国際対応タスクフォースリーダであり、ASTAP ITS EG議長を務める小山 敏氏(日立製作所)を加えた4名のパネリストにより、「ITSの普及方策」、「国際標準化」といった2つのテーマでのディスカッションが行われました。 テーマ1「ITSの普及方策」に関しては、ITSアプリケーション開拓をどのように実施するかについては、従来ITSは既存インフラに対して「オプション」と考えられがちであったが、市民の日々の生活に密着したインフラ一体のシステムとしてとらえ直した上で、公共機関がインフラの整備を行い、IT関連ベンチャー企業が小さなビジネスから容易に参入できる環境を作っていくことの重要性が指摘されました。また各国が検討・具現化しているアプリケーションについてB/Cのアセスメントや財源処置等まで含めた情報交換を行っていくこと、自動車交通以外の業界とのインターモーダルな領域へのITSの展開についても共に検討していくこと等の提言がなされました。 テーマ2「国際標準化」に関しては、いかにシンプルかつ明確なITS標準を作り上げるかが最も重要であるとの見解と、ISOとITUとの密な連携が必要であるとの提言がなされました。 また併せて、タイ、フィリピンのAPT研修生から、ITSの現状に関する報告があり、 タイでは、多様なメディアを通じた交通情報提供システムにより、慢性的な渋滞の緩和と、時間コスト効率改善による生活の向上にとりくんでいること、フィリピンでは主に、民間活力(含 海外資本)で様々なITSアプリケーションの導入を図っていること等が紹介されました。 6.閉会 閉会にあたり、ITS情報通信システム推進会議調査部会長である小出 公平氏(潟gヨタ自動車)より、官のファンディングと民のビジネス展開という考え方や今後DSRCの実用化で新たなITSアプリケーションが見えてくること、さらには国際標準化のこれまでの活動に対する評価と今後の一層の重要性についてなどに触れて挨拶がありました。 【懇親会】 セミナー閉会の後、霞が関東京會舘ロイヤルルームにて、セミナー講師、APT研修生を交えての懇親会が開催されました。約50名強の参加の下、大変和やかなムードで交流がなされ、今回のITS国際セミナーの成功を強く印象付けるものとなりました。 関連イベントトップページへ戻る
開催日時:平成14年3月28日(木)13:20〜18:00 会場 :霞ヶ関プラザホール 主催 :ITS情報通信システム推進会議 協力 :日本ITU協会(APT研修事務局) 参加者数: 聴衆 約150名 講師・パネリスト 6名 APT研修生(6カ国) 8名 日本ITU協会 6名(含 品川理事長)
まずセミナー開会にあたり、ITS情報通信システム推進会議運営委員長代理の今井 秀樹東京大学教授から、アジア太平洋州関係各国のITS関係者と意見交換を行えることは日本のITS普及を考える上でも非常に有意義であるとの挨拶がありました。 セミナーは、 ・ 中国ITSセンター・Xiaojing Wangセンター長、 ・ 韓国ITS コリア・Yong-Taeck Lee標準化部門長、 ・ 米国ITSアメリカ・Paul Najarianテレマティクス担当部長、 ・ 総務省総合基盤局電波部移動通信課・雨宮 明マルチメディア推進室長 以上、4名の講師の方からの講演と、それに引き続き、ITS情報通信システム推進会議研究開発部会長・川嶋 弘尚慶応義塾大学教授をコーディネータに、「ITSの普及方策」、「国際標準化」といったテーマでのパネルディスカッションが行われました。 各講師による講演、パネルディスカッションの概要は以下のとおりです。 1. 日本におけるITS情報通信への取り組み (総務省・雨宮 明氏) 日本におけるITS情報通信への取り組みと題して、日本におけるITSの現状とDSRCの普及方策について語った。 日本におけるITSの現状として、当初の見込みほど普及してないことを受け、今後、インフラと車載端末の整備の重要性を指摘。 また、2004年に予定されている愛知県でのITS世界大会に向け、ITSをビジョンからリアルビジネスとするための取り組みとして、福岡市、新潟県、豊田市、高知県で進めている「地域ITSモデルシステム」実証実験を紹介。 DSRCの普及方策として、DSRCとETCとの関係、今後のモバイルマルチメディアサービスの中での位置付けを概説し、共用車載機の投入により公的インフラと民間アプリケーションビジネスの相乗効果を図ることが有効であると指摘。国際標準化に向けた取り組みについてはITU-R、ISO/TC204活動の成果、ならびにアジア地域におけるAPTの活動を高く評価。 *講演資料:ITS in Japan(PDFファイル) 2. 中国におけるITSの現状と将来像(中国ITSセンター・Xiaojing Wang氏) 中国におけるITSの現状と将来像と題して、中国における道路交通事情全般、これまでのITSに対する取り組み,及び今後の開発計画について語った。 まず、中国における道路交通事情として、経済発展による自動車保有台数の急激な伸びにより、都市部での交通渋滞や環境問題、さらには交通事故が大きな問題となっていることを説明。 そういった問題と、急速に進展している情報通信分野のインフラ整備を背景として、ITSプロジェクトとして進めている以下のような取り組みを紹介。 ・ 国家ITSアーキテクチャの研究、 ・ ITS標準化プロジェクトの設置、 ・ 都市交通マネジメント(北京等100以上の都市)の導入、 ・ 公共交通マネジメント(ICカードバス等)の導入 ・ 通信省によるETCテストの実施、 ・ ITSラボラトリーの建設、 等々 今後の予定として、国家ITS開発計画として、総合交通情報システム、都市交通管理システム等の開発及びITSのテストデモンストレーションを10都市にて実施することについて語った。また、標準化についても、国内外での積極的な取り組みを行っていくことについて語った。 *講演資料:Current Status and Future Vision of ITS in China(PDFファイル) 3. 韓国におけるITSの動向と標準化活動(ITS Korea・Yong-Taeck Lee氏) 韓国におけるITSの動向と標準化活動と題して、現状及び今後のITSへの取り組み並びにいTSの標準化について語った。韓国における、道路交通関連での問題点として、 ・ 交通渋滞、環境汚染、交通事故による経済的損失 ・ 道路網の整備が遅れによる、交通渋滞の増加 等々があり、これまでの量を重視した交通政策に対し、効率重視が求められている点を指摘。今後は、インフラの開発改良とITSシステム導入による道路交通運営の効率化を同時並行的に実施して上記問題の解決を図る方針。ITSサービスアプリケーション実現に向けては、ビーコンからDSRCまで各種インフラを利用した検討を進めてきたこと、特にDSRCについて、パッシブ/アクティブの両方式の評価を行ってきたこと等を紹介。 また、ITSの標準化に関しては、 ・ TC204に沿った国内規格の整備、 ・ 官民の協調による新たな標準化システムの策定、 ・ 交通体系効率化法に基づいた技術規則の導入 等の活動を行ってきており、今後もアジア太平洋諸国が連携し、ISO/TC‐204を 推進していきたいと語った。 *講演資料:Latest trends of ITS and Standardization activities in Korea(PDFファイル) 4. 北米及びITUにおけるITS活動(ITSアメリカ・Paul Najarian氏) 北米及びITUにおけるITS活動と題して、ITSに関する取り組み及び標準化活動内容について語った。 米国においては、9月11日の同時多発テロ事件以降、母国安全保障においてITSが重要な役割を果たすようになってきた点を指摘。 トピックスとして、旅行者向けに(1)旅行者情報(2)交通情報(3)天気情報(4)ロードサイド情報等の各種情報提供を行う「511」サービスの導入が各州で導入され、米国で最も顕在化したITSアプリケーションとなりつつある事実を紹介。 また、米国におけるDSRCの動向としては、規模の経済を優先し、当面の技術標準としてT75でなく、IEEE802.11a/RAが採択されている(ただし次世代はT75)こと、公共安全と個人利用に分け各種アプリケーションを検討していることなどを説明。 ITSの標準化に関して、ISO/TC204とITU−Rの違いを認識した上で、相互に補完しながら標準化を進めていくべきと語った。 *講演資料:ITS-Telecom Related Activities(PDFファイル) 5.パネルディスカッション ITS情報通信システム推進会議研究開発部会長・川嶋 弘尚慶応義塾大学教授をコーディネータに、今回講演していただいた、 ・ 中国ITSセンター・Xiaojing Wangセンター長、 ・韓国ITS コリア・Yong-Taeck Lee標準化部門長、 ・米国ITSアメリカ・Paul Najarianテレマティクス担当部長 以上3名の講師にITS情報通信システム推進会議国際対応タスクフォースリーダであり、ASTAP ITS EG議長を務める小山 敏氏(日立製作所)を加えた4名のパネリストにより、「ITSの普及方策」、「国際標準化」といった2つのテーマでのディスカッションが行われました。 テーマ1「ITSの普及方策」に関しては、ITSアプリケーション開拓をどのように実施するかについては、従来ITSは既存インフラに対して「オプション」と考えられがちであったが、市民の日々の生活に密着したインフラ一体のシステムとしてとらえ直した上で、公共機関がインフラの整備を行い、IT関連ベンチャー企業が小さなビジネスから容易に参入できる環境を作っていくことの重要性が指摘されました。また各国が検討・具現化しているアプリケーションについてB/Cのアセスメントや財源処置等まで含めた情報交換を行っていくこと、自動車交通以外の業界とのインターモーダルな領域へのITSの展開についても共に検討していくこと等の提言がなされました。 テーマ2「国際標準化」に関しては、いかにシンプルかつ明確なITS標準を作り上げるかが最も重要であるとの見解と、ISOとITUとの密な連携が必要であるとの提言がなされました。 また併せて、タイ、フィリピンのAPT研修生から、ITSの現状に関する報告があり、 タイでは、多様なメディアを通じた交通情報提供システムにより、慢性的な渋滞の緩和と、時間コスト効率改善による生活の向上にとりくんでいること、フィリピンでは主に、民間活力(含 海外資本)で様々なITSアプリケーションの導入を図っていること等が紹介されました。 6.閉会 閉会にあたり、ITS情報通信システム推進会議調査部会長である小出 公平氏(潟gヨタ自動車)より、官のファンディングと民のビジネス展開という考え方や今後DSRCの実用化で新たなITSアプリケーションが見えてくること、さらには国際標準化のこれまでの活動に対する評価と今後の一層の重要性についてなどに触れて挨拶がありました。