第2章 ITS情報通信システムの将来像
1.「ITS推進に関する全体構想」における将来像
(1)ITSの開発・展開計画
「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」では、9の開発分野毎にシステムの実用化実績や研究開発等の進捗状況、海外での類似システムの開発状況等を勘案し、図表のとおり、システムの実用化時期等に関する開発・展開目標を設定した。
図表2-1 ITSの開発・展開計画
(2)ITSと国民生活の係わり
21世紀におけるITSと国民生活の関わりについては、同全体構想は、以下のとおり想定している。
まず、2000年頃の第1フェーズとして、ITSの創生期にあたるこの時期には、既にサービスが開始されているVICSや今後サービス提供が予定されているETCの普及により、ITSサービスの効果が国民生活の一部において享受され始めるとしている。。
次に、2005年頃の第2フェーズとしては、先行したサービスに続き、様々なITSの利用者サービスが順次導入され、交通システムの革命が始まるとしている。具体的には、利用者のリクエストに応じた目的地までの経路誘導が行われ、また、公共交通機関においては、定時性の確保等により、公共交通の利便性は飛躍的に向上するとされている。
さらに、2010年頃の第3フェーズでは、ITSの高度化にあたる時期と位置づけ、ITSを社会システムと定着させるための法的、社会的制度の整備が行われ、ITSによる効果は広く国民全般に行きわたるとしている。
最後に、2010年頃以降は、ITSの成熟期として、ITSの全てのシステムが概成するとともに、光ファイバー網の全国整備等による高度情報通信社会の本格的到来により、社会システムの革新が行われるとしている。
2.ITS情報通信システムの将来像
(1)将来像の検討にあたって
ここでは、「ITS推進に関する全体構想」における9の開発分野毎にITS情報通信システムの発展展望を描き、それを基にITS情報通信システムの将来像を明確化する。
これについては、まず、その前提として、ITS情報通信システムとしての活用が可能な各種移動通信システムやカーマルチメディアの進展動向等を明らかにした上で、各開発分野において必要とされる情報の種類を踏まえつつ、当該分野におけるITS情報通信システムの発展展望を、2000年から2015年以降まで、5年ごとのフェーズを基本として検討した。なお、これについては、「ITS推進に関する全体構想」の「開発・展開計画」の動向及び「ITSと国民生活の係わり」におけるビジョンを参考としている。
最後に、当該発展展望を基に、それぞれのシステムを実現するために必要とされる代表的な要素技術を抽出した。
また、本将来像の検討にあたって、道路交通という国民生活に身近な分野における情報通信システムの利用という観点からの検討が必要との認識の下、「高度情報通信社会におけるカーマルチメディアサービスの利用」を10番目の開発分野として新たに加えた。
更に、開発分野毎の発展展望を踏まえ、ITS情報通信システムの発展性の方向性を整理し、ITS情報通信システムの将来像イメージについて、他の種々のネットワークの連携を含めて明確にする。
(2)移動通信システム等の進展動向
ア 携帯電話、次世代携帯電話(IMT-2000)
現在、既に、携帯電話によるデータ伝送を利用した道路交通情報等の提供サービスが複数開始されている。
現行システムでは、データ伝送速度に制約があるが(9.6Kbps〜28.8Kbps程度)、2001年に導入予定の次世代携帯電話においては、大幅に高速化される(〜2Mbps(静止利用時))予定であり、準動画の伝送が可能となる。
イ マルチメディア移動アクセス(MMAC)
平成14年(2002年)頃を目処にMMAC(Multimedia Mobile Access Communication)として、屋内の半固定的な利用で156Mbpsまでの高速通信を可能とする「超高速無線LAN」及び、屋外での歩行程度の低速移動環境で数十Mbpsまでの高速通信を可能とする「高速無線アクセス」の実現を目指している。
さらに、MMACの利便性を一層向上させるため、高速移動中においても最大156Mbpsの伝送速度を可能とする「超高速マルチメディア移動通信システム」についても、平成22年(2010年)頃を目処とした実現が計画されている。
これらのシステムの実用化により、ITSにおけるマルチメディア情報の高度な利用が可能となることが見込まれる。
ウ 地上放送、衛星放送
また、放送型サービスについては、既にVICSにおいてアナログ方式によるFM多重放送が利用されているが、今後、地上波デジタル放送や、衛星デジタル放送の導入が行われる予定である。
これらのシステムは、既存のアナログ方式に比べ、周波数の利用効率が高く大容量伝送に適していることから、道路交通情報の提供等を始め、広域における情報伝送手段として、ITSにおける各種情報のデータによる提供や映像サービスとしての利活用が期待される。
エ 自営系システム
更に、その他自営系システムについても、現在、運送事業者等を中心に業務用としてMCA無線等が広く活用されているが、近年では、物流分野等を始めとして、情報処理端末との一体化を図った利用形態が出現しつつある。今後、デジタル化の本格的な進展に伴い、更にデータ通信等の利用が増大することが考えられる。
オ インターネット
インターネットについては、多種多様な情報が流通する双方向ネットワークとして、その潜在的な利活用ニーズは非常に高いと考えられる。
現状では、高速移動中の車両からのアクセスについては技術的な制約があるが、将来的にはITSにおけるネットワーク利用の中核を成すシステムとして、非常に有望なメディアであると言える。
(3)カーマルチメディアの進展動向
近年におけるカーマルチメディアの進展には著しいものがあるが、ここではそのベースとなっているカーエレクトロニクスの進展及び車両内の情報ネットワーク化の進展動向については整理してみる。
カーマルチメディアについては、カーエレクトロニクス技術の進展に負うところが大きいが、初期においては、充電、点火等車両に必須の制御装置に用いられ、その後、マイクロコンピュータ積極的な導入が開始されるとともに、センサー技術等が進歩し、各機能の制御が個々のレベルで最適化された。
また、排気ガス規制など法規制に対応するため、従来、個別に制御されていた各ユニットを組み合わせて総合的に制御を行うことにより、エンジンと変速機を統合的に制御するパワートレイン制御やステアリングの動きに従って車の挙動を制御する車両姿勢制御等が確立された。また、車載レーダや各種センサー機能等の組み合わせによる障害物検知、車間距離制御等も可能となっている。
更に、各制御装置に用いられるユニットを車内ネットワーク化(=車内LAN化)することにより、センサ信号、制御情報等が共有され、より総合的な制御が可能となっている。
今後については、ITSのサービスへの対応を前提に、ナビゲーションシステムが自律型から通信型に進展するとともに、高機能・多機能化した車載機を通じて、標準化された車内LANと道路側又は他の車両等外部との通信を行い、車外の運転環境を総合的に車両制御に反映させることが可能となることが見込まれる。
図表2-3 カーエレクトロニクス関連技術の進展動向
(4)ITSの各開発分野毎のITS情報通信システムの発展展望@ナビゲーションシステムの高度化
情 報 例 | 道路交通情報、最適経路情報、渋滞時の所要時間情報、駐車場の満空情報、駐車場予約情報、目的地情報、気象情報、他機関情報、経路誘導、移動車両間の経路情報の交換 |
今後の発展展望 | 2000年 VICS等の既存システムの高度化情報受信型のナビゲーションシステムの高度化が進展。 2005年 他の情報への検索等も可能なリクエスト型ナビゲーションシステムへと進展。2010年以降 移動車両間の情報交換も可能なオンデマンドシステムへと進展。自動運転を考慮したナビゲーションシステムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 高度位置認識・追跡技術、車載端末技術、デジタル地図技術、ワイヤレスエージェント技術、、高度ヒューマンマシンインターフェース技術、メディアインターフェース技術 最適経路情報分析技術、交通関連情報予測技術、情報符号化技術、データベース検索技術 等 |
A自動料金収受システム
情 報 例 | 車載機固有情報、車載機履歴情報、契約情報、出口情報、入口情報、バリア情報、通行履歴情報、利用明細情報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 有料道路における自動料金収受システム(ETC)の利用が本格化。
ETC技術を汎用化したスタンドアロンのシステムが実現。
(駐車場での入退出管理、ガソリンスタンドでの料金収受、ドライブスルーでのショッピング、
フェリー乗船場での通行管理、荷役タグによるトラック等の物流管理システム等)
2005年以降 カーナビゲーション車載機とETC等の車載機の一体化が進展。
ETC車載機への各種情報のダウンロード等が進展。
各種情報ネットワークへもアクセス可能な多目的無線ICカードが実現。 |
システム実現に必要な技術例 | ワイヤレスエージェント技術、セキュリティ・認証・暗号化技術、異ネットワーク接続制御技術、情報管理技術、マルチモード端末技術、 アンテナ共用化技術 等 |
B安全運転の支援
情 報 例 | 道路環境情報、ドライバーの状態情報、車両状態情報、前方・側方車両等の周辺車両情報、路面状況等の道路情報、周辺の歩行者情報 |
今後の発展展望 | 2000年 交差点、トンネル、分岐点等、ドライバーへの安全運転支援情報の要求が高い地点での専用スポットでの走行環境情報の提供、危険警告が実現。
2005年 車々間通信、レーダー、レーンマーカー等を駆使した運転補助システムへと進展。
自動運転補助技術を活用した物流車両システムが実現。
2010年 長区間の連続通信が実現され、運転補助サービスは更に高度化される。
2015年以降 一般車両も含めた自動運転が実現。車線変更、分・合流、インターチェンジ、交差点、駐車場等において適応されるものとなる。 |
システム実現に必要な技術例 | 車両レーダー技術、光無線融合通信技術、高度位置認識・追跡技術、サービス品質(QOS)制御技術、路車間・車々間通信技術、画像認識・生成技術、セキュリティ・認証・暗号化技術 等 |
C交通管理の最適化
情 報 例 | 交通量情報、通行速度情報、渋滞場所情報、渋滞時間情報、信号制御情報、レーン制御情報、災害情報、交通規制情報、交通事故発生場所情報、事故状況映像情報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 最適経路誘導に対応可能な信号制御システムが実現。
2005年 周辺車両への緊急事態発生、交通事故等の映像情報伝送等も組み込んだシステムへと進展。
2010年 自動運転機能を考慮したシステムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 最適経路情報分析技術、セキュリティ・認証・暗号化技術、路車間・車々間通信技術 等 |
D道路管理の効率化
情 報 例 | 道路交通情報、渋滞時の所要時間情報、通行規制情報、特殊車両等の車両位置情報、道路路面情報、災害発生復旧情報、気象情報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 既存システムの高度化、情報受信型システムの高度化が進展。
2005年 道路管理情報等の動画等の情報も享受可能なシステムへと進展。
2010年 自動運転機能を考慮したシステムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 高度位置認識・追跡技術、異ネットワーク接続制御技術 等 |
E公共交通の支援
情 報 例 | 道路交通情報、位置座標、乗り継ぎ情報、予約情報、運行情報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 公共交通機関の運行状況等のリアルタイムなデータを収集し、街頭等のスポットで情報提供を行うシステムが進展。
公共交通機関の位置情報をセンターが管理し、お客様からの要求に応じた最寄り配車を行うシステムが進展。
優先信号制御等による公共交通機関の利便性を高めるシステムが進展
2005年 各種情報ネットワークでもアクセス可能な情報提供システムへと進展。
2010年 自動運転機能を考慮したシステムへと進展。
他の交通機関とのデータの共有化が実現し、サービスが高度化される。 |
システム実現に必要な技術例 | 高度位置認識・追跡技術、最適経路情報分析技術、異ネットワーク接続制御技術、分散データベース制御技術 等 |
F商用車の効率化
情 報 例 | 道路交通情報、運行状況情報、貨物輸送情報、他機関運行状況情報、気象情報等 |
今後の発展展望 | 2000年 道路運送事業において利用可能な物流EDIシステム、求車・求貨情報システム、運行管理システムの高度化が進展。
荷役タグによるトラック等の物流管理システムが実現。
2005年 物流分野全体にまたがる物流情報交換システムのためのプラットフォームが構築され、荷物や車両の位置情報等の物流情報を各種ネットワークでも享受可能なシステムへと進展。
リアルタイムな動画情報の活用により車両運行管理システム、トータルデリバリーシステム、総合的な物流システムの高度化が進展。
車々間通信、レーダー、レーンマーカー等を駆使した運転補助システムを活用した。 自動運転補助技術を活用した物流車両システムが実現。 2010年 映像等の大容量の情報提供可能な運転補助システムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 高度位置認識・追跡技術、交通関連情報予測技術、最適経路情報分析技術、デジタル地図技術、異ネットワーク接続制御技術、ワイヤレスエージェント技術 等 |
G歩行者等の支援
情 報 例 | 最適経路情報、位置情報、施設情報、目的地情報、歩行者信号制御情報、緊急通報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 文字、音声等による経路案内、目的地情報等の専用スポットでの提供システムが実現。
高齢者、身体障害者のための経路誘導、信号制御(時間延長制御)が実現。
2005年 動画情報や各種ネットワークへのアクセスも可能な情報提供システムへと進展。
専用スポットな提供システムから線的、面的なシステムへ進展。
2010年 動画による経路案内、目的地情報の提供が実現。
2015年以降 ヒューマンフレンドリーな音声認識、エージェント通信、人工知能などを駆使した高度なシステムへと進展。
車両の自動運転と連動した危険防止システムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 高度位置認識・追跡技術、高度ヒューマンインターフェース技術、端末超小型化技術、最適経路情報分析技術、デジタル地図技術、表示デバイス技術 等 |
H緊急車両の運行支援
情 報 例 | 緊急事態発生場所情報、緊急車両動態管理情報、道路交通情報、最適経路情報、渋滞時の所要時間情報、信号制御情報、緊急車両接近情報 等 |
今後の発展展望 | 2000年 緊急時に車両位置情報等を自動通知し、関係機関に出動を要請する緊急自動通知システムが実現。
緊急車両の最適経路誘導に対応可能な信号制御システムが実現。
盗難車両からの自動通報システムが実現。
2005年以降 動画伝送や緊急情報の周辺車両等へも通知可能なシステムへと進展。 |
システム実現に必要な技術例 | 最適経路情報分析技術、高度位置認識・追跡技術、デジタル地図技術、高速ルーティング技術、サービス品質(QOS)制御技術、異ネットワーク接続制御技術、セキュリティ・認証・暗号化技術 等 |
I高度情報通信社会におけるカーマルチメディアサービスの利用
情 報 例 | 旅行・観光情報、ショッピング情報(電子決済に係る情報)、娯楽情報、行政サービス情報、防災情報、気象情報、公共交通機関の予約情報、バンキング情報、公的施設予約情報、インターネット情報 |
今後の発展展望 | 2000年 文字、データ、音声による移動中の旅行・観光・レクリエーションサービス情報の提供が実現。
2005年 動画情報や各種ネットワークへのアクセスが一つの端末で行えるマルチモード端末が実現。
多目的無線ICカード等の普及により、移動中の車内オンラインショッピングが進展。
電子秘書技術が実現し、車内から公共交通利用予約が可能となる。
2010年以降 自動運転を考慮したヒューマンフレンドリーなカーマルチメディアが実現。 |
システム実現に必要な技術例 | ワイヤレスエージェント技術、サービス品質(QOS)制御技術、セキュリティ・認証・暗号化技術、メディアインターフェース技術、光無線融合通信技術、車載端末技術、車内ネットワークシステム、マルチキャスト経路技術 等 |
(5)ITS情報通信システムの発展の方向性
今後におけるITS情報通信システムの発展の方向性については、これまでの検討を踏まえ、以下のように特徴を整理することができる。
@ 情報の大容量化、マルチメディア化、リアルタイム化
【現 状】
有線部分と比較して無線部分の通信速度に制約があることから、音声や小容量のデータ通信を主体とした情報提供が中心となっている。
【発展の方向性】
2000年初頭にかけて、マルチメディア化を前提とした高速・大容量の各種システムが実用化され、高品質なデータ情報及び映像情報をよりリアルタイムで享受することが可能となる。
A ネットワーク化
【現 状】
VICS、ETC等ITS専用システムを始め、既存のシステムについては各々独立した、スタンドアロン型のシステムとなっている。
【発展の方向性】
他システムとのネットワーク化が進展し、ネットワーク間の情報共有が図られ、多様かつ高度なITSサービスを複合的に享受することが可能となる。
B オンデマンド化、インターラクティブ(双方向)化
【現 状】
車側への片方向的な情報の流通が主体であり、情報検索エリアについても制約がある。
【発展の方向性】
移動中の車両から、インターネット等ネットワークへのアクセスが、簡単な操作で自在に行えるようになり、利用者が必要な情報を双方向で享受できるシステムへと進展する。
C 端末のマルチユース化、システムのヒューマンフレンドリー化
【現 状】
サービス毎に個々端末が必要。また、車内の空間容量には一定の制約が存在。
【発展の方向性】
マルチメディア化に伴い、端末の高機能化、マルチユース(多機能)化が進展するとともに、ヒューマンマシンインタフェースが確立され、ITSがよりドライバーに優しい、安全なシステムとなる。
(6)ITS情報通信システムの将来像イメージ
ここでは、前項におけるITS情報通信システムの発展の方向性を踏まえ、ITS情報通信システムの将来イメージを描くこととする。
前述したとおり、現在、ITS専用システムとして、既にVICS、ETC等が実用化または実用化段階に入っている。また、情報提供エリアの広域性等から道路交通情報等の公共性の高いITS情報の提供されている放送メディアをはじめ、携帯電話、各種自営無線、GPS等の各種情報通信システムについても、ITS情報の提供メディアとして活用されている。
また、高品質かつ高速度での情報伝送を可能とする次世代携帯電話や次世代インターネット、さらには、地上デジタル放送、衛星デジタル放送等も新たなITS情報の提供メディアとして活用されると考えられる。
今後、ITSの利用者サービスが更に高度化・多様化していく中で、各々の利用者サービスに要求される情報の特性(情報量、伝送速度、信頼性、リアルタイム性、双方向性、情報エリア等)に応じ、最適な情報通信ネットワークを活用していくことが必要である。
このことは、ITS情報通信システムの側からみれば、多種のITS情報が、種々のネットワークやシステムを通じ、利用者間で円滑な流通を実現することであり、利用者の視点から見れば、共通の情報通信プラットフォーム(情報通信基盤)として種々のサービスのが自在に利用可能となることを意味している。
以上を踏まえると、各種ITS情報通信システム間や他の情報通信ネットワーク等でのシステムの互換性を確保するとともに、ITS専用システムと種々のシステムがネットワークにより相互に連携し、情報の大容量化、マルチメディア化等の進展を踏まえた“ITS情報通信プラットフォーム”が形成され、発展していくものと考えられる。(図表2-5,2-6)
ITS情報通信プラットフォームの実現には、既存のネットワークを最大限活用した連携を図るとともに、円滑なITS情報の流通を実現することが必要である。そのためには、今後の通信と放送の融合の方向性にも留意しつつ、ITS情報の特性や各種情報通信ネットワークの特徴を最大限活用しながら、システムの構築を図ることが重要である。
図表2-6 ITS情報通信システムのイメージ
(7)ITS情報通信システムの将来像
以上の検討を総合的に考慮すると、今後2010年までの各フェーズ毎のITS情報通信システムの将来像については、以下のとおり整理できる。
○ 第1フェーズ(2000年頃:揺籃期)
既存のスタンドアロン型システムが、それぞれ高度化・汎用化することにより、高機能化システムが実現する。
○ 第2フェーズ(2005年頃:発展期)
個々システムに限らず、ネットワークを通じて様々なサービスを享受可能なシステムへと進展する。具体的には、情報内容は音声、データ主体のものから映像情報を含めたものとなり、これらが利用者からのリクエストに応じてオンデマンドでリアルタイムに入手することが可能となる。
また、これに伴い、端末側も高機能化、マルチユース化が進むとともに、安全運転に配慮したヒューマンフレンドリーなシステムへと進展する。
○ 第3フェーズ(2010年頃:熟成期)
システムが更に進化し、シームレスな情報流通が可能となるとともに、自動運転を考慮した総合的な機能を有するシステムへと進展する。
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