第1章 ITS推進の現況
1.ITS推進の意義
ITS関係5省庁(警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省)が平成8年(1996年)7月に策定した「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」においては、ITSの推進について以下の趣旨の意義を掲げた。
第一に、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)は、道路交通に関する総合的な情報通信システムであり、交通渋滞の軽減、交通事故の減少、輸送効率化、地球環境との調和等の国民生活に身近な道路交通問題解決の切り札である。また、21世紀は高齢化や少子化の進展と生産年齢人口の減少等の社会的制約が顕在化することが明らかであり、道路交通面においてもドライバーの負担をできるだけ軽くするようなシステムが要請されていることから、ITSはこの分野で大きく貢献できるものである。
第二に、ITSは、日本全国に網目のように整備された道路の利用と全国7000万台にものぼる自動車の運行に関する施策であり、自動車、情報機器等、関連産業の発展を通じて相当な経済波及効果が予想され、昨今の我が国の経済情勢に鑑み、新しい産業の創出が期待できるものである。ITSは、21世紀のマルチメディア移動通信の中核をなすものであり市場性が大いに期待されており、現代の携帯電話に代表される移動通信の発展と同様、将来の多彩なアプリケーション創造によるITSビジネスの開花が期待されるものである。
第三に、ITSは、国民生活に密着した道路交通を通じ、国民に高度情報通信社会の具体的な姿を示すものである。ITSは、国民生活の大部分を占める道路、交通、車両等の移動空間に関する施策であり、最先端の情報通信技術により、豊かで活力があり、多様なライフスタイルが期待される高度情報通信社会を先導する役割が期待できるものである。
本報告においては、これらの意義に加え、ITSと情報通信の係わりに留意した次の意義も新たに加え、検討を行う。
まず、ITSは、地域の活性化に資することが期待されている。情報通信システムとしてのITSは、地域からの魅力的な情報発信や地域住民の利便性向上等を通じ、地域の活力ある発展を支援することが可能である。また、地域の特性に根ざした多様なITSアプリケーション開発は、ITS推進における地域の重要な役割として期待される。
次に、ITSは、我が国単独の取り組みではない。日米欧それぞれが精力的な推進体制を築き、少なからぬ資源を投入してきた。この意味において、ITSは、今後に残された数少ない巨大プロジェクトの一つであり、かつ、技術開発・国際標準化の分野において、水面下でダイナミックに進行する世界競争の一分野であるとも言え、我が国が果敢に取り組むべきチャンスと捉えるべきである。
以上のことから、ITSは、道路、交通、車両、情報通信など広範な分野に及ぶものであり、関係5省庁はもとより産学官の強力な連携・協力の下、初めて推進可能となる国家的プロジェクトである。ITS実現の成否は、この連携の在り方次第であり、国が主導する産官学連携の成功事例として、将来他から注目され得る意義あるプロジェクトと認識し、取り組むことが必要である。
2.我が国における取組状況
(1)高度情報通信社会推進に向けた基本方針
平成7年(1995年)2月、内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信社会推進本部「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を決定し、高度情報通信社会における道路・交通・車両分野の情報化の考え方を示し、我が国におけるITSの推進の統一的な基本方向を初めて明確化した。基本方針においては、ITSは、高度情報通社会の推進に必要不可欠な「公共分野の情報化」であり、@VICSの推進、AITS情報通信関連技術等の研究開発・標準化活動の推進、BITSに関する国際協力の推進等を、総合的・計画的に行うべきことを定めている。
本基本方針は平成10年(1998年)11月に改訂され、新たに、「VICSのシステムの高度化の推進」、「地域におけるITSの推進」が盛り込まれ、今後一層のITS推進に向けて政府として新たな対応がなされた。
D道路・交通・車両分野の情報化
最先端の情報通信関連技術を活用して、道路と車両を一体のシステムとして構築し、渋滞、交通事故、環境の悪化などの道路交通問題の解決、物流の効率化、新たな産業の創出等幅広い社会経済効果が期待される高度道路交通システム(ITS)の推進を図る。
このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。 - 既に実用化されている道路交通情報通信システム(VICS)について、情報提供サービ スエリアの全国展開やシステムの高度化を推進する。
- 自動料金収受システム、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、公共交 通の支援、商用車の効率化等について、高度道路交通システム(ITS)推進に関する全 体構想に基づき、ITSの情報通信関連技術等に関する研究開発・実証実験の実施や地域 におけるITSの推進、ITSに関する国内外における標準化活動等を推進する。
- ITSについて、国際会議等における国際情報交換、国際標準化等の国際協力を積極的に推進する。
(「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(改訂版)より)
(2)高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想
高度情報通信社会推進本部が「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を決定したことを受け、平成8年(1996年)7月、警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省のITS関係5省庁は「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」を策定した。
本構想では、このような国家的プロジェクトの推進にあたっては、全体構想の下、網羅的・戦略的な取り組みが不可欠であるとして全体構想策定の意義を定義している。本構想では、ITSが目標とする機能、開発・展開計画にかかわる基本的な考え方を今後20年間の長期ビジョンとして取りまとめ、具体的には、図表1-2の通り、9つの開発分野と20の利用者サービスを定義し、開発分野別に研究開発、展開に関する産学官の努力目標を設定した。
図表1-1 全体構想が定義したITSのシステム概念図
(全体構想より)
図表1-2 全体構想の9の開発分野と20の利用者サービス
開発分野 | 利用者サービス |
1.ナビゲーションシステムの高度化 | (1)交通関連情報の提供
(2)目的地情報の提供 |
2.自動料金収受システム | (3)自動料金収受 |
3.安全運転の支援 | (4)走行環境情報の提供
(5)危険警告
(6)運転補助
(7)自動運転 |
4.交通管理の最適化 | (8)交通流の最適化
(9)交通事故時の交通規制情報の提供 |
5.道路管理の効率化 | (10)維持管理業務の効率化
(11)特殊車両等の管理
(12)通行規制情報の提供 |
6.公共交通の支援 | (13)公共交通利用情報の提供
(14)公共交通の運行・運行管理支援 |
7.商用車の効率化 | (15)商用車の運行管理支援
(16)商用車の連続自動運転 |
8.歩行者等の支援 | (17)経路案内
(18)危険防止 |
9.緊急車両の運行支援 | (19)緊急時自動通報
(20)緊急車両経路誘導・救援活動支援 |
(3)我が国のITS推進体制
ITSは、道路、交通、車両、情報通信など広範な分野に及ぶものであり、また、産業分野においても業界横断的な特質を持つことから、産学官の強力な連携の下に、初めて推進可能となる国家的プロジェクトと考えられている。
我が国のITSの構築にあたっては、高度情報通信社会推進本部の下、ITS関係5省庁が主導して産学官及び国際間の連携を進めている。関係5省庁にあっては、ITSに関係する諸課題に対して効率的に対処するため、担当者による意見交換、調整の場としてITS関係五省庁連絡会議を毎月開催している。
一方、産学の連携においては、学識経験者、民間企業、関係団体等で組織する「道路・交通・車両インテリジェント化推進協議会(: Vehicle, Road and Traffic Intelligence Society)」(会長 豊田章一郎トヨタ自動車渇長)が、ITS関係五省庁連絡会議と連携し、国内関係団体、学識経験者との情報交換を行うほか、アジア・太平洋地域における代表団体として欧米のITS関係団体に対しての窓口業務を行っている。
ITS情報通信システムに関する標準化機関としては、世界の電気通信を扱う条約組織としての国際電気通信連合(ITU)、鉱工業等の産業分野の国際標準を扱う国際標準化機関(ISO)、アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP)等の機関があり、我が国にはそれぞれの機関に対応する組織がある。
その他、(財)道路交通情報通信システムセンター (VICSセンター)、(社)電波産業会(ARIB)、(財)道路新産業開発機構(HIDO)、技術研究組合走行支援道路システム開発機構(AHSRA)、(財)自動車走行電子技術協会(JSK)、(社)新交通管理システム協会(UTMS)等がITSの研究開発・調査に必要な活動を推進している。
(4)具体的な取組状況
ア 道路交通情報通信システム(VICS)
VICS(Vehicle Information Communication System)とは、FM多重放送及び電波・光ビーコンを用いて、渋滞情報等の道路交通情報をリアルタイムにドライバーに提供するシステムであり、郵政省、警察庁及び建設省が連携して、平成8年4月に世界に先駆けて実用化し、現在、9都府県の一般道路及び日本全国の高速道路においてサービスを提供している。
VICSは、従来のカーナビゲーションの機能が目的地までの経路案内に限られたものであったのに対し、これにVICS情報を付加することにより、刻々と変化する道路交通環境を踏まえた運転が可能とするものであり、ナビゲーションの高度化を図るものである。
サービス開始以降、この2年強における普及状況には著しいものがあり、VICS対応車載機の数は、平成10年末でカーナビゲーションの普及台数が約370万台であるのに対し、約90万台にまで至っている。このような状況を踏まえ、今後については、サービスエリアの拡大に加え、ユーザーニーズを踏まえたシステムの高度化が課題として検討されている。
イ 有料道路における自動料金収受システム(ETC)
ETC(Electronic Toll Collection)は、車両のダッシュボード上に設置する無線車載機とこれに挿入して使用するICカード、有料道路の料金所に設置する路側アンテナ等により構成され、車載機と路側との間の無線通信により、高速道路等の料金所における料金徴収を一旦停車することなく自動的に行うことを可能とするシステムであり、平成11年(1999年)度中からの実配備の開始が予定されている。
現在、開発中のシステムは、ETCとしての利用を前提とした専用のシステムとなっているが、これに用いられている5.8GHz帯の電波を使用するワイヤレスカード技術については、料金決済機能、位置管理機能及び各種情報提供機能等への適用が可能であることから、ETCに限らず、駐車場管理や物流管理等の他用途への幅広い利活用が大いに期待されるところとなっている。
このような状況を踏まえ、平成10年(1998年度)より約2年間の計画で、ETCの汎用化技術等に関する研究開発が行われており、多様なアプリケーションに対応可能な短距離・双方向移動通信システムである狭域通信システム(DSRC:Dedicated Short Range Communications)の実現が検討されている。
(参考) DSRC
DSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)とは、図表1-7に示すとおり、多様なアプリケーションに対応可能な短距離・双方向移動通信のことであり、既にVICSで実用化されるなどITS情報通信システムを構成するシステムの一つである。現在、郵政省等によりDSRCの技術開発が進められており、高速道路の料金所(ETC)以外に、駐車場、物流配送センター、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア等でも利用可能になることが期待される。また将来は、車の走行支援の分野においてもDSRCがキーテクノロジーとなることが予想される。
DSRCの長所としては、
@大容量・双方向通信(数Mbps)が可能 (→画像等のITS情報のダウンロードが可能)
A小ゾーン通信のため、数mから数十m離れた特定の車にピンポイントで情報を送受信することが可能 (→有料駐車場等の場で個々の車両対応が可能)
B駐車場管理、物流管理といった多様なアプリケーションに対応が可能
(→広範囲な分野で利用されることにより車載機や設備の低廉化が可能)
C導入によりシステムの無人化が可能 (→物流分野等において管理費の低減が可能)
D無線を介した料金決済が可能 (→ICカードと併せ高度な電子決済化が実現)
が挙げられる。
なお、米国においてもDSRCの開発が進められている。平成10年(1998年)7月、米国連邦通信委員会(FCC)は、ITSに用いられるDSRC用の電波として5.8GHz帯(5.850-5.925GHz)の周波数を提案した。FCCは、2000年1月までに周波数の割当てや免許方針等のルールを定める予定で、現在、ITS Americaが主体となって、以下のDSRCのアプリケーション例を基に周波数仕様の要求条件の検討を行っている。
・自動料金収受 (Electronic payment services)
・高速道路の商用車通行管理(重量・積み荷の種類・安全等の検査)
(Commercial Vehicle Electronic Clearance)
・交通管理 (Traffic Control)
・緊急車両や公共交通のための交差点信号優先通行システム
(Transit Vehicle Signal Priority)(Emergency Vehicle Signal Preemption)
・道路交通情報提供システム (En-route Driver Information)
・公共交通管理 (Public Transportation Management)
・トラックやコンテナの物流管理システム (Freight Mobility)
・鉄道踏切の警報システム (Highway-Rail Intersection)
(FCC, ”Notice of Proposed Rule Making”, June 11,1998より)
ウ 安全支援システム
安全運転支援システムに利用可能な通信システムとして、60GHz、76GHz帯の電波を使用する小電力ミリ波レーダについては、既に平成9年(1997年)度までに技術基準の策定等が終了している。
ITSにおける利用としては、車両に搭載することにより、路面の障害物検知、前方車との車間距離計測等を行うことが可能であり、衝突防止のための運転者に対する危険警告や、ブレーキシステム等の制御系との連動による運転補助、更には自動運転への応用等が可能である。現在、既に一部製品化され、特殊車両等への搭載が行われているが、今後、一般車両への幅広い普及が予想される。
エ ITSモデル地区実験構想の推進
ITSモデル地区実験構想については、ITSの社会的有効性の評価等を行うことを目的として、平成9年度(1997年度)から平成11年度(1999年度)までの予定で、関係5省庁が連携して、モデル地区で行うITS実験内容の検討等のフィージビリティスタディ(事前調査・設計)を実施している。
これについては、平成10年度(1998年度)において、モデル地区実験候補地として先進的な5地区等(豊田市、高知県、警視庁(東京都)、岐阜県、岡山県)が選定されており、平成11年度(1999年度)から各地区等が行う実験について、必要に応じて関係省庁が所管行政に基づいた支援を行うことともに、取組状況、成果等を他に広く情報発信することも予定されている。
図表1-8 選定されたモデル地区と実験テーマ
自治体等 | 実験テーマ名称 |
豊田市 | ITSモデル地区実験・IN豊田 |
高知県 | KoCoRo (kochi communication road)-地域からのITSの提案 |
警視庁 | 東京都内都市部における公共車両優先システム(PTPS)の効果検証実験 |
岐阜県 | ・移動体通信による「資源循環型社会」の構築
・民間活力を利用した岐阜県ITS関連情報提供システムの実現性検討 |
岡山県 | 岡山県におけるITSモデル地区実験 |
オ スマートウェイ(知能道路)構想と走行支援道路システム(AHS)
スマートウェイ(知能道路)とは、先端的なITS技術を統合して組み込むことにより、安全性・円滑性等において画期的に優れた21世紀の道路であり、多様なITSサービスを汎用的に実現させる共通基盤(プラットフォーム)を目指すものである。これについては、建設省が主導して、「スマートウェイ推進会議」を設置しており、既に本年2月に第1回会議が開催され、本年6月にスマートウェイ実現に向けた提言が行なわれる予定である。
今後の予定としては、平成11年(1999年)に実現プログラムの策定、制度・基準類の整備に着手し、平成12年(2000年)にAHSの実証実験を実施、平成13年(2001年)に制度・基準類の策定を予定しており、21世紀に向けた着実で新しいITS展開が期待されている。
平成11年(1999年) | 実現プログラムの策定、制度、基準類等の整備着手 |
平成12年(2000年) | AHSの実証実験 |
平成13年(2001年) | 制度・基準類の完成 |
平成14年(2002年) | スマートウェイの整備着手 |
平成15年(2003年) | スマートウェイの実現 |
一方、走行支援道路システム(AHS:Advanced Cruise-Assist Highway Systems)とは、運転中に人間が行う状況判断や自動車の機能を、道路のインフラと情報通信システムが協調して支援するシステムである。
例えば、道路に沿って展開される装置と車との間で各種の無線通信を行うことにより、前方の障害物回避のための車両制御を行うもので、最終的には自動運転を目指すこととしている。我が国では、平成8年(1996年)9月、未共用であった上信越自動車道(小諸IC―東部湯ノ丸IC間)の道路を利用して、往復11kmの連続自動走行、衝突防止、車線逸脱防止等の走行実験を行い、成功している。
AHSは、ITSの中でも最も技術的に高度なシステムの一つで、開発にあたっては図表のとおり、3段階のシステムを設定し、継続的な研究開発を進めている。
AHS- i (information) | 情報提供システム(先方の路面凍結などの状況を検出して、情報をドライバに提供し、危険を回避するシステム) |
AHS- c (control) | 制御支援システム(路上の障害物や停止車両を検出して、ドライバの反応が遅れた場合に車両を制御するシステム) |
AHS- a (automated cruise) | 自動走行システム(自動運転を行うシステム) |
カ スマートカー構想:先進安全自動車(ASV)
先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)は、近年急速に進歩しているエレクトロニクスなどの新技術を活用することにより自動車を高知能化し、安全性を格段に高めたものであり、ITS技術の自動車としての受け皿となるものである。運輸省は、平成3年度(1991年度)からASV推進検討会を設置し、ASVの研究開発を推進している。
平成3年度(1991年度)からの第1期5か年計画においては、@予防安全技術、 A事故回避技術、B衝突時の被害軽減技術及びC衝突後の災害拡大防止技術からなる4分野の主要安全技術を策定し研究開発を推進した。平成8年(1996年)3月には、大部分のASV要素技術を搭載した試作乗用車16台により公開デモ走行を実施した。
現在は、平成8年度(1996年度)からの第2期5か年計画において、対象車種に従来の乗用車にトラック、バス及び二輪車を加え、要素技術の開発とともにヒュ−マン・インタ−フェ−スの最適化、ITSの他のインフラとの整合・連携について検討を行うなど、研究開発の推進を図っている。第2期5か年計画の研究開発項目として、@予防安全技術、A事故回避技術、B全自動運転技術、C衝突安全技術、D災害拡大防止技術及びE車両基盤技術からなる6分野の主要安全技術を設定し、32システム技術の研究開発に取り組んでいる。
今後、ASVの各システム技術について、今世紀中に市販車両への搭載を図ること等により順次実用化を目指すとともに、各システム技術を統合制御できるシステムを開発し、21世紀初頭において統合システム搭載ASVの実用化を目指して研究開発を推進している。
キ 新交通管理システム(UTMS)
新交通管理システム(UTMS:Universal Traffic Management Systems)は、車両との双方向通信を行う光ビーコンを中心として、ドライバーに対してリアルタイムの交通情報を提供するとともに、最先端の技術を用いて交通管理の高度化を図るシステムであり、歩行者を含めた道路交通の安全、円滑、環境保全、利便性向上を目指したものである。
ク 国際対応(国際標準化活動とITS世界会議への参加)
(ア) 国際標準化活動
ITSに関連する技術の国際標準化は、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)、アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP:Asia-Pacific telecommunity Standardization Program)及び国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)において作業が進められている。
ITUにおいてはITSの無線通信分野について標準化作業を進めており、主な標準化項目としては、
- 無線要求条件に関すること
- 必要な機能及び技術に関すること
- 周波数利用の現状に関すること
- 必要な通信量及び周波数帯域に関すること
等があり、現在精力的に作業が進められている。
また、ASTAPは、ITUへの協力を目的として、アジア・太平洋地域における電気通信の標準化作業を担当している。ASTAPは、アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asia Pacific Telecommunity)の下に、平成9年(1997年)11月に設置された標準化機関であり、機関内にITS専門委員会が設けられている。平成11年(1999年)1月のバンコックで開催された専門委員会会合においては、VICSやETCの規格が取りまとめられ、その後ITUへ標準化提案を行う等、地域からの標準化提案を積極的に行っている。
一方、ISOにおいては「都市及び地方の陸上交通輸送全般に関する標準化を進める専門委員会(TC204)」において、平成5年(1993年)5月から検討が進められている。TC204には、以下のとおりの作業分科会(WG)があり、それぞれの分野において規格策定作業が進められている。
WG1 システム機能構成
WG1.3 車輌自動認識/積載貨物自動認識
WG3 TICSデータベース技術
WG5 料金収受
WG6 貨物運行管理
WG7 車輌通行管理
WG8 公共交通
WG9 交通管理 | WG10 旅行者情報
WG11 ナビ・経路誘導
WG11.1 車載機決定型経路誘導
WG11.3 中央決定型経路誘導
WG13 ヒューマンインターフェース
WG14 走行制御
WG15 狭域通信
WG16 広域通信 |
(イ) ITS世界会議への協力・参加
道路交通のインテリジェント化に関する世界規模での情報交換及び実用化に関する国際協力の推進を目的とするITS世界会議が、平成6年(1994年)より開催されており、我が国は積極的な対応を行っている。
ITS世界会議では、ITSの早期実用化を目指して、国際協調を討議し、最新の研究発表を行っており、欧州、アジア・太平洋地域及び米国の3極の持ち回りにより開催されている。平成6年(1994年)に第1回パリ会議が開催されて以来、毎年開催され、日本では、平成7年(1995年)に横浜で第2回会議として開催され、昨年はソウルにおいて開催された。
アジア・太平洋地域における世界会議の事務局業務はVERTISが担当しており、当地域では、我が国が主導して国際交流、国際協力を推進していくことが期待されている。
(参考)ITS世界会議の経緯と今後の予定
◇ 平成6年(1994年) 第1回パリ会議
テーマ:"Towards an Intelligent Transport System"
◇ 平成7年(1995年) 第2回横浜会議
◇ 平成8年(1996年) 第3回オーランド(米国)会議
テーマ :"Intelligent Transportation: Realizing the Future"
◇ 平成9年(1997年) 第4回ベルリン会議
テーマ :"Mobility for Everybody"
◇ 平成10年(1998年) 第5回ソウル会議
テーマ:“Toward the New Horizon Together for Better Living with ITS”
◇ 平成11年(1999年) 第6回トロント(カナダ)会議(予定)
◇ 平成12年(2000年) 第7回トリノ(イタリア)会議(予定)
◇ 平成13年(2001年) 第8回シドニー会議(予定)
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