ITS豆知識

arrow第10回 車々間通信からユビキタスへ

1.はじめに
 
 第3回 ITS豆知識にて「話す車‐車々間通信入門」の説明がありました。簡単におさらいすると車々間通信は、ある特定の場所を走行する車両同士、あるいは運転者同士が互いの意思疎通を図る通信システムです。通信内容は運転者近傍に特化した内容、すなわち走行中の安全支援に役立つ周囲や物陰の走行車両の挙動、今走行している場所の快適走行に役立つ便利な情報等、近傍のリアルタイムな情報を多く含みます。運転者の慣習に例えれば、パッシングライトを点滅させて道を譲る、手を上げて挨拶をする、などを通信で行うものと言えます。
  最近は国レベルで交通事故の死傷者削減を高い目標数値にした取り組みが始まっております。このような取り組みにはこれまでの車両内の安全性の追求という技術向上に加えて、自車や周囲の他車の状況を通信により共有し、より予測的な安全確保を図る新しい安全のしくみを導入することが不可欠です。たとえば目では見えない場所の出来事を回り込んで届いた電波による通信によって検知して事前に運転者に知らせる交差点走行支援のようなしくみです。
 今回は通信による安全の新しい取り組みと、もっと面白くて便利なコミュニケーション手段を合わせた車々間通信の活用と将来象について解説します。
 
 
2.あなたの車は私のセンサ

 車々間通信を利用した狭域通信(DSRC)の特徴として、どこにいてもその時、その場で、その人と通信を行い自分の周囲の環境を認識することが可能になります。あなたの車両で知りえた道路状況を私も共有することです。これは、無線を利用して物の情報や自分の周囲の環境を認識するユビキタスコンピューティングの考えかたと非常によく似ています。
 RFID(無線認識タグ)は情報の入手側が読み取り動作を行わない限り情報を返さないパッシブなセンサとしてしか働きませんが、車々間通信はそれぞれの車が環境情報の発信源になるアクティブなセンサとして動作します。10台の環境情報を10台の車で共有する場合を考えましよう。RFIDの場合は1台が他の9台の情報を読み取りに行かなければなりませんので9回×10台×往復2回=180回の通信が必要になります。車々間通信の場合は、1台の車の情報発信を他の9台が受信すればよいので台数分10回の通信だけでよいことになります(同報通信の場合)。交差点などの車両が多い状況などでは通信量削減に特に威力を発揮します。
 図1は交差点の陰から車が飛び出すような状況です。車々間通信によりビルの陰からの車両の速度と方向を目で見える前に知らせてくれるため、余裕を持って速度を落とすことができます。



【図1 車両のビル陰からの飛び出し警告】

3.車は離れていてもいつも繋がっている

 WWWは固定の通信網がくもの巣状に絡み合っていて、どこにある情報へもパケットのバケツリレーを使ってアクセスし内容を調べることができるようなしくみです。ユビキタスネットワークはあなたがどこにいてもまた移動していても、どこかにいるだれとでも、いちばん近くて便利なネットワークの入り口を見つけてあたかも固定の通信網に繋がっているのと同じことができるようなしくみです。  
  車々間通信では常に周囲の車両と安全運転に役立つ情報を交換しながら、変化するネットワークを構成しています。このとき必要な情報は必要な距離まで確実に届くようにデータのバケツリレーのしくみを備えています。このネットワークにあなたが必要な検索情報を乗せパケットのバケツリレーを依頼すると自由にネットワークに接続できます。図2には街中の車々間通信のネットワーク化された利用シーンを示します。もちろん近くに誰もいない場合は、図3のように携帯電話や他の通信手段と組み合わせることも有効でしょう。車々間通信が普及してくれば車々間通信内線電話を利用して近くのインターネットの入り口に接続できるようになり通信料金を気にしなくても良くなるかもしれません。
 

【図2 車々間通信のネットワーク化】



【図3 いろいろなネットワークとの連携】
 
4.車内は世界に通じている

 車両周辺センシングとしての車々間通信とネットワークとしての車々間通信を両立する車載機の新しいしくみが考えられています。一種類の車載機器にて様々なサービスを受益可能な車々間通信の将来像を実現する仕組みについてもう少し詳しく説明しましょう。
  まずは車の中のネットワークをのぞいてみましょう。図4は将来の車内接続された車内の電子機器や制御装置のネットワークのイメージです。車の中の機器は既に高度に電子化されていますが、セキュリティや安全性への影響からそれぞれがまだ自由に接続されていません。特に通信によって外との接続を持つようになるとしくみを知らない人でも十分な安全性が確保できていなければなりません。
  図4には、なにやらたくさんのコンピュータが繋がっていますが、乗っている人はほとんどこのようなたくさんの配線を見ることはないでしょう。図5は同じく将来の車内のネットワークが完備された車の中の想像図です。見た目には今の車内とほとんど変わりませんが、運転席に見えるメータ類やカーナビゲーションの画面やオーディオ装置が実は車の中と外のネットワークとのあらゆる情報と繋がっています。
 

【図4 将来の車内ネットワークの想像図】



【図5 車内はスッキリ変わらないが、いろんなことができるようになる】

 将来は、オーディオ、ラジオ、TV、ビデオ、後方監視カメラ、車載レーダなどの車載情報機器やセンサと、車々間通信システムとの相互接続が必要不可欠な要件となるでしょう。そのためにはいつでも、どこでも、一種類の通信用車載機器にて路車間通信や他のいろいろな通信を共用したり、ネットワークに接続したりできる機能が必要です。

5.実現のために

 専門委員会では、ここで取り上げた車々間通信の恩恵を誰でも支援できるようにするために必要なシステムの標準化を検討しています。また車や建物の陰での無線通信の電波の強さや繋がり方を地道に細かく調べてシステム実現のための様々な実験を行っております。
  最近話題のユビキタスは、あらゆるものにコンピュータがつけられて周囲の情報を知ることができるユビキタスコンピューティングと、どこにいてもグローバルな情報にアクセスできるユビキタスネットワーキングの機能を備えています。車々間通信の車両周辺センシング機能と車々間通信と路車間通信が連携した自動車用のネットワークは、安全を指向したユビキタスの入り口となるでしょう。

 
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