ITS豆知識

arrow第9回 DSRCの利用例とサービスの開始

今回は、" その時・その場で・その人と"通信できるDSRC(狭域通信: Dedicated Short Range Communications )の利用例について、二つの視点からご紹介致します。

1.快適、便利
 
まず、我々市民が直接、身近に感じやすい利用例から紹介してまいります。

 意外と身の回りに浸透したものの一つに、「リモコン」があります。昔から、“立っている者は、親でも使え”の言葉のように、ついでに何かを取ってきてもらう行為に心当たりのある方は少なくないはずです。 妹を手足のように使う、“イモート・コントロール”なる言葉が流行った時代もありました。現在の生活の中にも、テレビ、ビデオ、エアコン、オーディオ等々、リモコン付きのものが数多くあります。2〜3mの距離を動くだけなのですが、どうやら人間は一度そのスピードと手軽さに触れるとすっかり魅了されてしまうようです。屋外に目を向けても、自動車の施錠と解錠を行うキーレスエントリなど、ますます多様化してきました。
 
 このように、人が電化製品や機器・システムへ意志を伝える方法の一つとして、リモコンがあります。ボタン一つで、思っていることを伝達できるわけです。それでは自動車の運転中はどうでしょう? そうです。感の良い方ならすぐに思いついて頂けるのが、ETC(有料道路自動料金収受システム)です。 リモコンならぬ、“ETC車載器”を搭載しておくだけで、「通行する」といった意志を伝えることができます。運転中は、リモコンのボタンを押すようなことはできませんが、その代わりに自動車を運転操作して‘ その場 'に行き、ボタンを押したのと同じように意志を伝達するわけです。
 
【家電のリモコン】 【DSRC】
 
テレビやエアコンのリモコンを持っている場合と同じように、誰でもできる操作だけなら、これで十分です。 ETCのように、「通行する」だけでなく、同時に「料金を支払う」意志も伝える場合は、‘ その人 'である確認も必要です。さらに、その人であることをより確実に伝えたり、何か物の受け渡しをしたりするような場合には、時間的な確認、すなわち‘ その時 'の確認も必要になります。
 
  ETCで利用されている狭域通信方式のDSRCは、車の高速移動や大量な情報伝達にも対応した、いわば車向けの高機能リモコンのようなもので、ETC以外にも幅広い利用が期待されています。しかも、リモコンには無い、“双方向通信”なので、意志の伝達だけでなく、「気持ちまで伝わる」手段と言っても過言ではありません。
  このように、道路際にあって私達の生活を支えているレストランや書店、レンタルビデオ、ガソリンスタンド、ドライブスルー等々といったお店と車が結びつき、今以上に快適で便利なカーライフが実現する時も、もうそこまで来ています。
2.安心、安全

 海外では、特定の地域での出入りが制限され、そこに暮らす一般住民の安全を守るようなしくみを取り入れている街区(セントルイス:プラベートプレイス等)があるそうです。我が国でも、マンションなどの集合住宅などでは、出入りゲートがあって暗証番号を入力するか、直接各戸に連絡して解錠してもらわないと個別の玄関にさえ辿りつけないしくみを取り入れているものがあります。個々のプライバシーが尊厳され、テロや凶悪犯罪から身を守るために一定のセキュリティガードが施されるようになってきています。
  人の出入りだけでなく、車両の出入りについても入退場の管理ができるようになると、それだけ安心の度合いを高めることができます。例えば出入り車両に対して、DSRC車載器と身元を保証するICカードのセットを利用する等の整備を考えると、より安心な環境に近づけることが可能となるわけです。



【安心の入退場管理と生活環境のスイッチ】

 また、交通安全の面から見ても、多くの自動車にDSRC車載器が装備されると、これまで表示や音に頼ってきた運転者への危険通知などの場合に、情報の伝達手段の可能性が飛躍的に広がります。もちろん、装備の有無にかかわらず、誰にでも安全に関する情報の提供が行われるべきなのは言うまでもありません。路側の表示板や警告サイレンなどは誰にでも提供される情報です。これに加えて、危険が迫った時に車内の音楽を自動的に一時停止したり、座席が振動するなどの触感なども交えながら情報提供があった方がより安全に役立つはずです。車載器の装備によってこのような事も可能となります。事実、交通管理者など常に安全に対して一定の役目を担っている国や地方自治体においても、このような安全性向上の研究に日夜取り組んでいます。


【見通しの悪い交差点での電子カーブミラー】

3.実現時期

 携帯電話がまだ自動車電話だったころ、機能はほとんど通話だけでした。今ではインターネットの接続による各種ホームページの閲覧やメールでのやり取り、ゲームソフト等コンテンツのダウンロード・実行など機能は豊富になっています。社長のシンボルから学生のシンボルに代わり、爆発的な普及があってこその機能アップです。
 
  今、ETCの普及の伸びはこの爆発的な普及を予感させるまでになっています。今後、現在のETC車載器から徐々に多機能のDSRC車載器に置き換わっていくと共に、ETC以外の一般サービスも加わり、普及は加速していくことでしょう。ここまでにご紹介した利用例も、多機能DSRC車載器の普及時点がその実現時期ということになります。テレビ放送で例えると、国営放送のみの時代から民放参戦の時代へ移っていくわけです。既に一部の駐車場などでは民放版のサービスが開始しつつあり、多機能DSRC車載器も市場に姿を見せはじめました。
 
  本格的なマルチチャンネル・マルチサービス時代の到来の前に、テレビ放送のような受信チャンネル切り替え等の運用確定、有料放送のスクランブルなどの確立、料金課金方式の確定、広告放送などのルール決め、緊急時の運用ルールの確立などが急がれます。また、情報が一方向のみの‘放送'と異なり、個人情報もやり取りされる可能性のある‘双方向通信'ならではの情報保護方式確立も必要です。
 
 しかしながら、いつの時代もそうであるように、全て準備万端の完璧なものを最初から用意できるケースはそれほど多くはありません。多くは市場に評価されながら成長していくのも事実です。その点で、いくつかのルール決めや方式の確立を待たずに、利用できるものから順次、今後サービスが開始されていくものと考えられます。
 
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