ITS豆知識

arrow第8回 ITS導入への道しるべ −地域ITSリファレンスモデル−

 今回は、自治体の方々が各地域においてITS施策を展開する際に、参考書として活用できる「地域ITSリファレンスモデル」について紹介します。
 「地域ITSリファレンスモデル」とは、地域のITS推進者が各地域に適したITSサービスの導入検討、費用対便益(B/C)のシミュレーション、官民分担の議論が行えるようにサポートする参考書として検討されたものです。

1.地域ITSリファレンスモデルを作成するに至った経緯と特徴

 現在、ITSを取り巻く環境は、カーナビが1,000万台を突破し、ETCも約150万台まで普及するなど、急速な進展を見せはじめている一方、提供するサービス・情報は、地域毎に人々の生活に密着したものになっているとは言えない状況にあります。
 そうした問題点についてITS情報通信システム推進会議 企画・調査専門委員会では、その解決のための一定の指針を示し、計画立案の参考書となるべく、「地域ITSリファレンスモデル」を作成しました。
  特に、これまで困難とされていた地域でのITS導入に対するB/Cの算出の定量化について一定の解答を示しており、必ずや地域のITS推進者の方々に、新たなITS施策展開のための参考となるものと考えています。

2.地域ITSリファレンスモデルの活用方法の概要

地域ITSリファレンスモデルを用いたITS導入の検討手順の概略を説明します。具体的な検討手順は以下の通りです。このリファレンスモデルの中で、サービスモデルという考え方を導入することで、全国の多くの自治体の方が利用できるように工夫しました。サービスモデルとは、モデル的な都市を選択して、都市の特徴にあったあるべきサービスの姿を提示したものです。
  1. 地域の特性に合ったサービスモデルの選択
  2. サービスモデルを参考にした提供すべきサービスの決定
  3. 提供するサービスに関わる費用と便益の算出
  4. サービスを提供する際の官民の役割分担を試算
  5. 地域ITS事例集を活用し、他の自治体での事例を参考にし、市中にあるシステムを活用した具体的計画の策定

3.サービスモデルの選定

地域ITSリファレンスモデルでは、7つの地域ITSサービスモデル(図1を参照)を提案しており、地域のITS推進者が、各地域の課題に則してどのモデルに合致するかを選び、それらを参照することで、ITSの導入検討を簡易に進めることができます。各地域でどのモデルに合致するかを選定する手順は以下の通りとなります。
  1. 都市の都市特性(車両密度)、地域特性(人口、気候)、交通特性(公共交通および道路交通の課題)を踏まえて地域ITSサービスモデルの中から最適なモデルを1つ選択する。
  2. 172ある利用者サブサービスの中から目指すモデルにあったサブサービスを選択する。
  3. 選定した地域ITSサービスモデルに合致するサブサービスより、システム物理モデル図を作成する。






A1:公共交通利用支援モデル
経路情報 、道路交通情報等を利用者に提供し、鉄道、バス、タクシー等の各種交通機関がインターモーダルに結ばれた街
A2:物流環境支援モデル
利用者と物流事業者に情報提供を行い、物流の利便性が高い街
A3:沿道環境改善モデル
効果的な駐車場情報の提供により 、渋滞を減少させ、沿線道路環境を改善して来訪者と居住者の双方に便益を与える街
A4:災害時緊急対応モデル
震災・洪水等の大災害時に交通弱者の2次災害を抑止するととともに、被災者救済、都市再興を迅速確実に行う街






B1:渋滞緩和モデル
主要幹線道路の効率化な制御や、目的地までの経路誘導を行うことで、渋滞レベル低減を目指す街
B2:安心・安全な街モデル
降雨、降雪等のセンシングによる気象情報収集、車両・人の検知を活用して、高齢化社会に向けた住みやすい街






C3:歩行者支援モデル
交通弱者にやさしい街
図1 7つの地域ITSサービスモデル

4.費用と便益の算出

 ITSを実際に地域へ導入するにあたり、検討初期段階における最も重要な要因となるのが投資コストとその投資効果の概算の算出です。本リファレンスモデルでは、ITS推進者が計画段階で大枠のB/Cを把握しやすくするため、マクロ的な視点での費用と便益をサービスモデル毎に算出しています。
 具体的には、今回費用と便益を算出するためのツールを作成しており、ITS推進者は検討する都市に合わせて各種パラメータを設定することで、より当該都市に近づけた評価を行うことができます。
 費用と便益の具体的な定量化アプローチ(図2を参照)として、費用については、7つの地域ITSサービスモデル毎のシステム物理モデル図を活用し、人口、車両数など都市モデルの想定規模及び普及率に基づいたイニシャルコストおよびランニングコストを算出できます。
 また、便益については、ユーザ直接便益および社会的便益の2つのメリットをモデルとして算出しています。ユーザ直接便益は、ユーザがサービスを享受するために支払った対価であり、社会的便益は、地域ITSサービスモデルをもとに都市モデルの基礎数値、受益者数、受益量等を設定し算出しています。



図2 費用対便益(B/C)の算出方法

5.官民の役割分担

地域ITSの効果的な展開を図るためには、官民の間でどのように提携・分担し、推進していくかが重要となります。
 サービスモデル選定の段階で選択したサブシステムを単位として、サービス提供の実現難易度と社会的必要度の2軸に対して評価項目を設置し、定量化評価した結果を2次元にマッピングすることで、官民の役割分担を検討しています。
 図3は、歩行者支援モデルにおける官民分担のイメージ例を示しています。省庁や自治体を公的セクタ、製造業者やシステムベンダ、コンサルタント業者、サービス提供者等を民間セクタと定義した場合、右上次元寄りは公共セクタが、左下次元寄りは民間セクタが主体となり、分担する方が望ましいと考えます。
 更に、地域ITSサービスを導入・展開する際に障害となる課題について、整理しています。これらをベースに、各都市における官民分担を検討していくことで、議論を深めることができます。


図3 官民分担イメージ例

6.地域ITS事例集の活用

 各地域の地域特性を鑑みた、サービスモデルの選定、サブサービスの選択の方法を上述しましたが、具体的にサブサービスを実現するために、より安価に、より早急に出来るよう、既存のシステム製品や自治体の事例等(図4を参照)を調査し、地域ITSサービスモデル毎に取り纏めました。
 これを利用することで、各地域ITSサービスモデルを実現するために必要なシステムについて、具体的なイメージを掴んでもらうとともに、より幅広い範囲からシステム、商品を選定でき、より利用者に密着したサービスを実現し、かつコスト的にも安価にシステム構築ができると考えています。


図4 事例調査シートの一例

☆詳しくは、以下の資料をご参照ください。
  1. サービスモデルの選定から官民の役割分担まで
    地域ITSリファレンスモデル講演資料 (3MB:pdfファイル)
    もしくは、
    平成13年度 地域ITS情報通信システムWG報告書 (1MB:pdfファイル)
    報告書詳細資料編 (900KB:pdfファイル)
  2. システムとサブサービスのカバー範囲調査/事例調査シート集(注:会員限定)
    平成14年度 地域ITSリファレンスモデルWG報告書 (9.73MB:pdfファイル)

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